≪10年前≫

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部屋の時計を見ると、午後5時前。 でも、天気が悪いからか、部屋は薄暗く感じた。 お互いそのまま無言でいると、背中に羽島さんの心臓の鼓動を感じる。 それに意識を集中していると、やっぱりさっきと同じ幸せな気持ちがじんわり胸に滲んで、おのずと頬が緩んできた。 初めての彼氏、初めての交際。 初めて尽くしでも、彼とこうなるのは必然だったんじゃないかと思うほど、私の中では自然なことだった。 私、多分、このままずっと羽島さんだけを好きな気がする。 そんな気しかしない。 「好きだなぁ」 「……」 回された羽島さんの腕に手を添えて、頬を寄せる。 「なんでこんなに好きなんだろう」 「……さぁ」 私の頭に顎を乗っける羽島さん。 肌にカサカサと当たる布団の感触が、妙に心地いい。
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