≪10年前≫

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「あー。もう、好きすぎて吐きそう」 「吐くなら、外行ってね」 「冷たいなー、彼女に対して」 「よくそんなに何回も言えるね」 呆れた声だけど、ほんの少し笑っているのが後ろ向きでもわかる。 言わずにいられないほど、吐き出さないとこぼれるほど、私の胸の中はいっぱいだった。 さっきも何回も言ったんだけど、言い足りない。伝え足りない。 「だって、ちゃんと態度と言葉で示さなきゃ伝わらないでしょ?」 「そう?」 「あ、ちょっと違うや。伝わってほしい、じゃなくて、伝えたいんだ」 「一緒じゃないの?」 「熱量の違い」 「何キロカロリーくらい違うわけ?」 「なんでカロリーが出てくるの? 食べ物の話じゃないよ」 「……」 そこまで話すと、羽島さんが私の頭上で盛大なため息を吐いた。 「もういいや」 「変なの」 私は顎を上げて逆さまの羽島さんの顔を見た。 彼は、少しだけ端を上げた唇で、私のおでこにキスを落とした。      
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