≪10年前≫

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「愛の力?」 「ぶは。つーか、あんな美人にそこまで想われて、羽島も男冥利に尽きるな。大事にしてるのも頷ける」 「長いよね、あのカップル」 「2年の1学期からじゃなかったっけ?」  羽島さんの名前が再度出てきたことで、私の耳は他の音は拾わずに、まるで彼らの話をイヤホンで聞いているみたいになっていた。 手指に力が入らず、冷たくなっていくのがわかる。 あの人達、何の話をしてるんだろう。 なに、わけのわからないこと、言ってるんだろう。 「もともと家が近かったみたいで、幼馴染らしいよ。香澄が中学の時引っ越して……」 「おい、もうやめろ、リア充の話は。ひとり身の俺が惨めになるだろ」 「アハハ、ドンマイ」 「あ、電車来た」
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