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笑い声に混ざって、ガタンガタンと振動とともに聞き慣れた音が近付いてくる。
今から卒業後のクラスの集まりに行くであろう彼らは、電車が来たことで生じた風に髪型を気にして整えながら、乗車する準備をしている。
「……」
目の前で電車が止まった。
私の足は動かなかった。
まるで、鉛でも付けられているかのように。
―― “彼女と約束”? “堂園 香澄”? “愛の力”? “2年の1学期から”?
次々と電車に乗り込む人たち。
彼らも楽しそうに話しながら乗車して、奥の方へと歩いて行く。
さっき聞いた流れるような会話の端々のワードを、手放してしまいそうな意識の中で懸命に手繰り寄せるけれど、結論へ辿りつきたくないのか、私の頭の中は思うように働いてくれない。
佇んだままの私を、後ろから来た人たちが不思議そうに追い越しながら、電車に乗り込んでいく。
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