≪10年前≫

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乗降口のドアが閉まるのを、私はまるでテレビでも見ているかのような感覚で見た。 発車し、また大きな風を伴いながら通り過ぎていく電車。 いまだ、一歩も動けない私。 「……」 ……あれ? もしかして……。 重くて鈍い痛みが、胸に広がる。 心臓を圧縮されているような息苦しさに、呼吸が乱れる。 「……っ」 もしかして私、羽島さんに騙さ……。 パンッ、と私は自分の両手で両頬を叩いた。 自分でやっときながら、予想以上の痛みに背筋が伸びる。 本人に確かめるまでは、信じないもん! 認めたくない気持ちが、無理やり私を奮い立たせ、踵を返させる。 歩みが早足になり、駅を出るころには駆け足になっていた。 濁った色の空の下、さっき来た道を、涙を出させる暇を与えないように走った。
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