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胸に重苦しさと焦りを抱いたまま、道路沿いの羽島さんの家の脇まで来た。
塀伝いに玄関のフェンスの方へと曲がる十字路。
走ったために乱れた息を整え、歩みに戻しながらその角を曲がった私は、彼の家の玄関前で今まさにインターホンを押さんとする人の影に、思わず足を止める。
驚きと痛みを伴う心拍の跳ねに、胸を押さえながら一歩下がる。
その手は若干震えていて、整えたはずの息は、また荒くなった気がした。
開いた扉。
出てきたのは、さっき『またね』と手を振って別れた羽島さんだった。
「香澄」
声が聞き取れてしまう距離を恨んだ。
私の心の中で、何かが割れた音がする。
そして、そこからどんどん冷たくなっていく体。
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