5126人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「卒業おめでとう、達樹」
「おめでとう。……って、学校でも言ったんだけど」
「アハハ。いいでしょ、何回言っても」
「どうやって来たの?」
「お母さんが送ってくれた」
母親が先程車を停めたのであろう場所を振り返り、そう説明した彼女。
視力が悪ければよかった。
その見覚えのあるキレイな顔は、目は合わなかったものの、私の目にしっかりと映った。
彼の部屋で、彼と仲睦まじくツーショットで写っていた写真のあの笑顔が、今しっかりと重なる。
「入る?」
「うん」
バタンと重々しく閉まる玄関扉の音が、私から何かを切り離した。
その場で立ちすくんだままで、閉まった扉をぼんやりと眺める。
最初のコメントを投稿しよう!