≪10年前≫

38/40

5126人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「卒業おめでとう、達樹」 「おめでとう。……って、学校でも言ったんだけど」 「アハハ。いいでしょ、何回言っても」 「どうやって来たの?」 「お母さんが送ってくれた」 母親が先程車を停めたのであろう場所を振り返り、そう説明した彼女。 視力が悪ければよかった。 その見覚えのあるキレイな顔は、目は合わなかったものの、私の目にしっかりと映った。 彼の部屋で、彼と仲睦まじくツーショットで写っていた写真のあの笑顔が、今しっかりと重なる。 「入る?」 「うん」 バタンと重々しく閉まる玄関扉の音が、私から何かを切り離した。 その場で立ちすくんだままで、閉まった扉をぼんやりと眺める。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5126人が本棚に入れています
本棚に追加