5126人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
さっきまでの幸せの絶頂だった自分は、もう思い出せない。
逆に、今までの小さな疑問の数々が、気味が悪いほどぴったりとその空洞に収まり、鳥肌が立った。
だから、自分の高校の知り合いの前で話したらいけなかったんだ。
だから、あんな写真が机の上にあったんだ。
だから、好きだって言葉……もらえなかったんだ。
「……」
ずくずくと、鋭利な刃物で心臓をえぐられ、かき回されているようだ。
曇り空も手伝って、辺りはどんどん薄暗くなる。
『今日でおしまいだから、いいんだけどね。本当は』
聞き取れなかった羽島さんの言葉が、今更クリアになって耳に響く。
“おしまい”? 私が? 彼女が?
ううん、どちらにせよ……。
「……」
羽島さんには、彼女がいたんだ。
私じゃない彼女が……。
目の前が一気に滲んだかと思うと、その涙はすぐにひと筋頬を伝って地面に落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!