≪10年前≫

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さっきまでの幸せの絶頂だった自分は、もう思い出せない。 逆に、今までの小さな疑問の数々が、気味が悪いほどぴったりとその空洞に収まり、鳥肌が立った。 だから、自分の高校の知り合いの前で話したらいけなかったんだ。 だから、あんな写真が机の上にあったんだ。 だから、好きだって言葉……もらえなかったんだ。 「……」 ずくずくと、鋭利な刃物で心臓をえぐられ、かき回されているようだ。 曇り空も手伝って、辺りはどんどん薄暗くなる。 『今日でおしまいだから、いいんだけどね。本当は』 聞き取れなかった羽島さんの言葉が、今更クリアになって耳に響く。 “おしまい”? 私が? 彼女が? ううん、どちらにせよ……。 「……」 羽島さんには、彼女がいたんだ。 私じゃない彼女が……。 目の前が一気に滲んだかと思うと、その涙はすぐにひと筋頬を伝って地面に落ちた。
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