≪10年前≫

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「……」 事故だった。 見えてしまったのは。 とてもきれいな女の人が、とびきりの笑顔で写っていた。 一瞬だったけど、それだけはちゃんと見えた。 そして、表情こそわからなかったけれど、隣に羽島さんが……。 「なに?」 「ううんっ!」 凝視していたので、羽島さんが不審そうな目をこちらに向けた。 私は、ぶんぶんと頭を振り、いただきます、と紅茶を飲んでまぎらわした。 ……元カノ、かな。 心の中で、小さく呟く。 一瞬でよくわからなかったけれど、その一瞬だけで、彼氏彼女感が伝わってくるような写真だったから。 ずーん、と重たい気持ちになりそうなのを、気にしない! と、すぐさま心の中で自分に言い聞かせる。 過去を気にする女は重いって雑誌に書いてあったし、勝手に人の机の上のものを見る女なんて論外だ。 なにより、今の彼女は私だし、今私は幸せなんだから、気にする必要なし! うん!
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