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かと思うと、顔と顔の距離が一気にゼロになり、まるで真綿を掠めたような優しいキスをされる。
目を見開いたままだった私は、
「びっ……くり、したー……」
と、顔を離した羽島さんに、何度も瞬きしながら言う。
「悪い?」
そう言われてようやく、恥ずかしさが後からやってきた。
……って、その“悪い?”は、急にキスしたことに対してかな?
それとも、やきもちをやいたことに対して?
「悪く……ない」
またもや緩みそうになる口元を無理やり結べば、変な顔になっていたんだろう、羽島さんの表情がふっと和らいだ。
そして、また近づけられる顔、伏せられる睫毛、合わさる唇。
「……」
……な、なんか……。
私のほうが上だったはずの重なっていた手は、いつのまにか羽島さんが上になっていた。
繰り返されるキスに、いつもとは違う空気に、ほんの少し心が尻込みし始める。
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