≪現在≫

2/40
5642人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「もう大丈夫なの? 三浦さん」 出社した小宮さんが、隣の席に腰を下ろしながら私を覗き込む。 「大丈夫です。ご心配かけてすみません」 「あと1日くらい休んじゃえばよかったのに」 「ハハ」 熱が出て早退して、その次の日は丸1日休ませてもらった。 厳密にいうと、羽島さんに休めと言われ、自動的に休みになったんだけれど。 「あ、おはようございます、課長」 「おはよーございます」 フロアに入ってきた羽島さんが、首の後ろに手を置きながら自分の席に座る。 私は立ち上がり、 「おはようございます。昨日は休んですみませんでした」 と、自然に頭を下げた。 「治ったの?」 「はい。もう大丈夫です」 「そう。じゃあ、さっそくだけど、今日の仕事。これとこれ、入力お願い」 「はい」 他人行儀に書類を受け取る。 偶然、微かにあたった指先。 私は意識の揺れを気取られないようわざとゆっくり瞬きをし、席に戻った。 互いに目は合わさなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!