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「かしこまりました」
「あっ、プラス、ウィスキーとティフィンミルクとカシスオレンジもお願いします! あのテーブルです」
「はい。わかりました」
慌てて追加注文すると、斜め後ろにいる彼が、
「上司のグラス空いてんの、よく無視できるね」
と、顔を覗き込んで悪態をついてきた。
「失礼しました」
私はそう言って顔を背け、トイレへと向かう。
「三浦さん」
「……」
「この後、どっちの部屋?」
トイレへと曲がる角を折れると、周囲から死角になったその狭い空間で、ついてきた羽島さんが私の背中に言葉を投げてくる。
「どっちでもいいです」
振り返らず、投げやりに答えると、トイレのドアノブに手をかけた私に影ができた。
羽島さんが、後ろから開きかけたドアを手で押さえている。
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