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「……そういえば」
「なんですか?」
「この前泊まった日、目覚めたらすぐ帰れって言ったよね」
「だから、美容室予約してたんですって」
ウソだけど。
「連絡はこっちがしない限りしてこないし。それだけならまだしも、返信もない時あるし」
「羽島さんのメールも意味不です。なんですか? 今朝の写メ」
「ネコが葉っぱを頭に乗せたまま横断歩道渡ってたんだぞ。ダブルでレアだろうが」
「だから、なんでそれを私に?」
「……」
止まった会話に、私はほんの少し、顔を彼側へと向ける。
死んだ魚のような目で項垂れている羽島さんが、はぁ、と心からのため息を吐いた。
「……そりゃあ、イブも友達との約束優先だわな」
「あ、それは本当です。カッチンとヤゴと」
「“それは本当”ってどういうことだよ。“は”って。……ていうか」
体をようやく離し、壁に体重を預けて寄りかかる羽島さん。
眼鏡を少し上げて目頭を押さえ、再度大きなため息。
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