≪現在≫

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「俺の服着てると、少年みたいだね」 借りたロンTとジャージ姿の私を見て、我慢しきれずに吹き出した羽島さん。 私の襟足の髪をほんの少し引っ張った。 「てか、まだ髪濡れてるし。ちゃんと拭かないとまた風邪ひく」 そう言って、羽島さんは私の首元のタオルを取り、お母さんが子どもにするみたいにワシャワシャと拭きだした。 「……なんか、恋人みたいですね」 「恋人でしょ」 眼鏡をしていない昔の面影いっぱいの彼が、向き合ってされるがまま頭を拭かれている私に、またさらりとそんなことを言う。 思いがけず心臓が跳ねた私は目を逸らすけれど、それを見透かしているかのように、彼は私の顔を覗き込んだ。
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