≪現在≫

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「あぁ、同窓会? ……うん。30日……は、まぁ、空いてるけど」 相槌を打ちながらの羽島さんひとりだけの声に、電話をしているのだということがわかる。 私は開けかけたドアノブから手を離し、その場で待つことにした。 「市原、お前が幹事なの? ……あぁ。へー……。……うん」 時折、ハハハ、と笑いながら羽島さんが電話している中、“市原”という名前になんとなく聞き覚えがあるなと思ったけれど、あまり思い出したくなくて考えるのをやめる。 「香澄?」 ドアの前に突っ立ったままだった私は、次に発せられた固有名詞に、息を止めた。 瞬時に体が冷たくなるような感覚が襲う。 “香澄”……。 香澄。……堂園 香澄。 一度聞いただけだったのに、今でもフルネームがはっきりと頭に浮かんだことに、自分自身ゾッとした。
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