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「……」
ゆっくりと私の頭を撫でて、時折毛先をつまんでは、また撫でる。
何かを思い出したかのように急にフッと笑ったのが、指の振動で伝わってきた。
もしかしたら、あの時のあれを思い出したのかもしれない。
あぁ……、私、この手が、この指が……好きだ。
好きだなぁ……。
じんわりとそう思うと、胸を針のようのなもので刺された気がして、瞼が震えた。
「おわっ!」
いきなり私が目を開けたから、羽島さんは私の頭を撫でていた手を引っ込め、素っ頓狂な声を上げた。
「なに? 起きてたの?」
「今起きました」
「目覚め、良すぎだろ」
体を起こすと、羽島さんと同じ目線になった。
真冬なのに、この閉めきられた薄明るい空間は暖かく感じて、何気なく微笑んだ彼の口角を見ながら、私はうっかり心地よさを感じてしまった。
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