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ヤゴは澄んだ元旦の青空を見上げながら、眩しそうにベンチに背を預け、大あくびをした。
ヤゴの髪はさっきまで帽子をかぶっていたせいか、短髪なのに毛先が寝ていて、まるでサルみたいだ。
「カナは何してたの? 年末」
「年末……は、実家に引きこもってたよ。寒いし」
「ふーん。デブになるぞ」
「今日、いっぱい歩くから大丈夫だよ」
年末は、本当に引きこもっていた。
なんとなく、外に出たくなかった。
外出して出くわす確率なんて限りなく低いはずなのに、私は見たくなかったのかもしれない。
彼と彼女が会っているところを。
「あ」
コートのポケットのケータイが鳴って、私はすかさずそれを取り出す。
「カチ子?」
「……いや……会社の人」
“あけましておめでとう。元気?”
短い文面のその差出人を見ると、“羽島達樹”の文字。
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