≪現在≫

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「年末の夜、歩いてたから、駅前。見間違いかと思ったけど、やっぱりあれ、“羽島”だったんだ」 「ふ……ふーん……。へー……」 最悪だ。 なんで、こんな人づてに、自分の中で一番回避していた情報を聞かなきゃいけないんだ。 「……ていうかさ、ヤゴ、高校の時に一度、羽島さんを見たことがあるって言ってたよね? だからって、一度だけでよく覚えてるね、顔」 話題をほんの少しシフトして、胸の痛みを逃がす。 「あー。話したから、わりと印象に残ってたんじゃね?」 「え? 誰と?」 「“羽島”とに決まってるだろ」 「どこで?」 「お前んちの前」 「は? いつ?」 「お前の誕生日の日。ほら、カチ子と三人で祝おうってなって、俺がお前んち遅れて行った日」
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