≪現在≫

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「あ」 そんなことばかりが頭の中をグルグル巡っていたから、家に帰りついてから気付いた。 ヤゴの帽子を借りっぱなしだったことに。 親戚の家に行く、と言っていたので両親はいない。 静かなリビングに入り、私は佇んだまま、その帽子をクルクルと指で回す。 「……まぁ、いっか。近いうち返そう」 予定があるって言っていたので、今日中に返すのは諦め、私はその紺に白い模様の入ったニット帽をソファーの上に置いた。 ケータイを取り出し、一応ヤゴにメールをした私は、昼間に受け取った羽島さんからの写メを再度見る。 「こたつ……」 羽島さんの部屋にこたつなんて、この前行った時にはなかった。 どこか、違う人の家だ。
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