≪現在≫

29/40

5403人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「離せバカ。サイテー。本当にサイテー」 「バカでけっこう、サイテーでけっこう。下手な別れ方して昔みたいなお前見るほうがイヤだもん」 「修羅場になったらどうしてくれるの?」 「揉めろ揉めろ。全部ぶちまけろ」 頭上でアハハハと、人の気も知らずにのんきな笑い声が響く。 頭を引き寄せられたまま、顔をさっきの方向へ向けると、もう彼女の姿はなかった。 「みんながみんな、ヤゴみたいにはできないよ。思ったことを全部口に出して生きるなんて」 「……そんなことないよ。俺は思いきり自分を棚に上げてる」 「え?」 顔を上げようとすると、頭を押さえているヤゴの手に力が入れられ、そのままの体勢でいっそうヤゴの胸に顔を押し付けられる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5403人が本棚に入れています
本棚に追加