≪現在≫

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「小宮さん」 「え?」 「忘れ物。返しそびれていました」 南条さんは、取り出したものを小宮さんに手渡す。 「何……を」 「ベルト」 受け取るときには丸まっていたそれは、小宮さんの手に渡った途端に細長く垂れ下がり、彼女は慌てて握り締める。 私も見覚えのあるそれは、小宮さんが特定のスカートをはいている時につけている、細身の茶色いベルトだった。 「……」 ポカンとした小宮さんをよそに、南条さんは颯爽とフロアへと入って行き、見えなくなった。 「……なに? これ」 わかっているはずの小宮さんが、あ然としたまま私に聞く。 「ベルト……ですね」 「……ベルト?」 「……ですね」 3回ほどそのやり取りを繰り返し、小宮さんはようやく、「なんで?」と言った。        
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