≪現在≫

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半年くらい前から毎朝、通勤途中、河川敷で犬の散歩をしている女を見かけた。 犬のためというよりも、自分が走るついでに犬を連れている、と言ったほうがいいだろうか。 短い髪が走るたびに浮いては落ちる中、無の顔でひたすら犬とともに走っていた。 遠くから見たら本当に少年同然で、電車で追い越す際、一番近くの距離で見た体のラインでかろうじて女だと分かった。 毎朝見るな程度で、特に気にも留めていなかったけれど、一度だけハッとしたことがあった。 リードに足が絡まって転んだ彼女。 電車でちょうど通り過ぎる瞬間に、犬と顔を見合わせながら無防備に笑った。 まるで、花が咲いたかのように。 なぜか懐かしさを覚えた俺は、その顔が頭に焼き付いた。 その後、程なくして姿を見ることがなくなったけれど、まさか、自分の部下として入社してくるとは思ってもいなかった。
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