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「……萌えるんですけど」
「はい? 課長、なにか言ったっすか?」
「いや。うるさい」
「声かけただけでうるさいとか!」
最近、カナはなんとなく変わってきた。
古賀が言うように、ちんちくりんのくせになんとなく女を感じさせるようになって、いい意味でも悪い意味でも、隙ができるようになってきた。
社内での笑顔も、表面的じゃない顔がちらほら見られるようになってきて、それはそれで上司としても喜ばしいことなんだけれど……。
「……」
自分が、こんなふうになるなんて思わなかった。
学生の時と変わらないくらい、余裕がない。
彼女がまた、自分の手の中からすり抜けていきそうで……。
「重いっすねー」
「は?」
「このビールジョッキ。重……、いだっ!」
俺は意味もなく腹が立って、古賀の足に再び蹴りを入れた。
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