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「買い物でも映画でも遊園地でも、……なんなら一日中ここでもいいけど」
「じゃあ、映画! ちょうど見たいのがあって。どこで待ち合わせる?」
「……や、なんで待ち合わせ? 迎えに行くよ。俺待つの嫌い」
「嫌いなの? 昔はいつも早めに来て、本読みながら待ってたのに。……って、あ、やっぱり、さっきの」
彼女が言い終わらぬうちに、その唇に口付ける。
続きを言いたげだった彼女も、キスの長さに観念して、そのままゆっくりと目を閉じた。
当時の切なさが、今の幸福を引き立たせる。
生徒手帳に“待ってる”と書いた青臭い18の俺も、今の俺を形成する一部だ。
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