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「うわああああぁ!た、たすけてくれええええぇ!」
地平線まで続く幻想的な砂丘に、不釣り合いな悲鳴が響き渡る。
「お、お兄ちゃんどうしようどうしよう…!」「バカ!手をはなすな!しっかりつかまってろ!!」
青年は泣きそうになっている少女をのせたラクダを引き、砂にとられる足を必死にうごかす。
ただでさえ餌が少ない砂丘だ。獣たちも生きるためにしつこく兄妹を追いかけてくる。
ちょっと近道しようと思ったら、こんなところに迷い込むなんて…あぁ俺のバカ!! だいたいなんだよあれハイエナか!? なんで砂漠にいるんだよ!? 俺達やせ形だから食ってもうまくないぞクソ!と自分を責めているとー
「きゃ!」「え、エリザベス!!」
ラクダの揺れに体をもっていかれ落ちた妹が、砂丘の山を転がりおちてしまう。
砂がクッションになって怪我はないようだが、唸り声をあげながら獣が少女の周りをかこむ。
「エリザベス!うおおおおぉ!」
果敢にも獣につっこみ妹のそばに駆け寄る。それでも獣はひるむことなくどんどん数を増やし、ついには逃げ道がなくなってしまった。
「お、お兄ちゃん…」「うっ……ごめんな、マジおわりかも。」
か細い声で震えながら弱音をはく青年に、獣がいっきに襲いかかってくる。
―おわった……さようなら、母さん、父さん……エルサ……
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