第3楽章

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「もう、十分です」 ポツリ、告げると。 「ナニが?」 不思議そうな匠の声がした。 「将来の蓄えまで準備してもらったし、責任は十分果たしてます」 匠の保険のお陰で、 肩の荷が軽くなったのは事実。 遣うかどうかは別にしても、 貯蓄があるのとないのとでは違う。 「返すなよ」 やっぱり、侮れない匠の声に、 カオを上げて向き合う。 「コレ以上は、もう」 ――コレ以上、踏み込まないで 私が産みたくて勝手にしたんだから まだやるコトも、あるんだから 「俺……『なんでもっと早く知り合えなかったんだ』って言ったけど……」 ドクン――と、 胸が疼く。
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