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「もう、十分です」
ポツリ、告げると。
「ナニが?」
不思議そうな匠の声がした。
「将来の蓄えまで準備してもらったし、責任は十分果たしてます」
匠の保険のお陰で、
肩の荷が軽くなったのは事実。
遣うかどうかは別にしても、
貯蓄があるのとないのとでは違う。
「返すなよ」
やっぱり、侮れない匠の声に、
カオを上げて向き合う。
「コレ以上は、もう」
――コレ以上、踏み込まないで
私が産みたくて勝手にしたんだから
まだやるコトも、あるんだから
「俺……『なんでもっと早く知り合えなかったんだ』って言ったけど……」
ドクン――と、
胸が疼く。
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