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「……知り合ってたな、とっくに」
匠の深い息と一緒に過去が現れて、
いたたまれなくなる。
「美森――小さくていい。オマエの未来をひとつずつ、くれないか」
遠慮がちに。
でも、ハッキリと。
匠の意思が届く。
丸い襟、黒いニットの長袖。
下の白いシャツの襟に包まれた首。
柔らかい髪が揺れて、
真っ直ぐな匠の眼差しが、苦しい。
「未来をひとつずつくれ、って……」
戸惑う私に、
匠の目が細くなる。
「今夜のメシ、俺が作るから食え」
思いがけない、言葉だった。
「明日は、散歩しよう。3人で」
それが“小さな未来”だと、
匠が笑った。
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