第3楽章

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「……知り合ってたな、とっくに」 匠の深い息と一緒に過去が現れて、 いたたまれなくなる。 「美森――小さくていい。オマエの未来をひとつずつ、くれないか」 遠慮がちに。 でも、ハッキリと。 匠の意思が届く。 丸い襟、黒いニットの長袖。 下の白いシャツの襟に包まれた首。 柔らかい髪が揺れて、 真っ直ぐな匠の眼差しが、苦しい。 「未来をひとつずつくれ、って……」 戸惑う私に、 匠の目が細くなる。 「今夜のメシ、俺が作るから食え」 思いがけない、言葉だった。 「明日は、散歩しよう。3人で」 それが“小さな未来”だと、 匠が笑った。
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