第3楽章

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凄絶だった5歳の時がくるまれて、 心ごと抱き取られる感覚に、 何も、言えなくなる。 匠は。 私の手首を掴んだまま、 テーブルを回って傍にきた。 そっと、頭を引き寄せられて、 コワレモノみたいに扱われる。 カラダが触れれば、キモチが湧く。 好きとか、愛おしいとかに似たモノが胸の奥から込み上げて、 間違えてるんじゃないかと思う。 こんなの、違う。 間違ってるのに。 知らせるつもりはなかった。 なのに、知られないのは苦しくて、 知られるのも苦しかった。 何よりも。 匠があの時のように、 傷付くコトが嫌だったのに。 ――あー……私、支離滅裂だ
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