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何か、大切なものが、
掌からこぼれてしまった。
穢れた自分を、
透き通るような政宗だけが、
浄化できたのに。
八重の救いは、
政宗にしかないと、
思っていたから。
本心を取り出す時だけは、
“八重”、と名乗る。
もう、失くした名前。
昔に、戻る時だけの名前。
そう、まだ幼くて。
親の愛は永遠で、
世界は美しいと、思っていた頃。
上手くいかない現実を、
呪うのも、苦しむのも。
昇華できたような気持ちになって、見詰められるのも。
ここだけでいい。
政宗の無事を、八重は祈った。
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