第3楽章 #2

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††† 私にとって、 弟は予期せぬ家族だった。 母、雅が。 『これ以上はね、家族が増えることは駄目なのよ』 そう、言っていたから。 今なら、分かる。 白澤有雅が、血縁の近さに怯え始めていたこと。 それでも、母に溺れていたこと。 美しくて可憐な母が。 白澤有雅より年上だとは、 どうしても思えなかった。 年長者として。 白澤有雅を引きずり込んだ責任は、自分にあると、 母は思っていただろう。 それでも。 儚げで、 夢見るように笑う母は、 私の、誇りだった。 ひたすらに、 母は美しかった。
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