第3楽章 #2

9/36
前へ
/36ページ
次へ
それから。 母は酷く、塞ぎこみ始めて、 夢うつつで、弟の世話をした。 母から。 笑顔を引き出したくて、 匠も私も、くだらないコトをした。 けれども母は。 頼りなさそうに微笑するだけで、 声を上げて笑うことはなかった。 どうしても。 晴れない顔をした母が、 心配だった。 白澤有雅の仕打ちを、 はっきりとは知らなかったけれど。 幼心に、 信用できないと、思っていた。 だって。 夢見るような母の笑い顔が、 消えた。 母の為なら、 私は、何でもするつもりだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加