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そのドアから入ってきたのは。
「政宗、八重に挨拶を」
紛れもなく、あの“政宗”。
袴姿ではなく、スーツ姿だけど。
後ろへ撫で付けられた髪。
切れ長の大きな鋭い目。
整った鼻梁。
口角が上がった薄い唇。
温度を感じさせない瞳。
『柿原八重』として、メールを交わしていた大切な“政宗”。
水気を含ませたような、鮮烈で若々しい威圧感を滲ませた“政宗”。
「初めまして。『八重』さん?」
ニッコリと笑んだ口元と目元は、
息を呑むほど柔らかい。
「……なん、で……」
「私の息子を、大事な会議に呼んだだけだ。白澤印刷をねだられてね」
“政宗”が、白澤印刷をねだった……?
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