第4楽章 #2

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女には、 女の演技がわかる。 そう言われる所以みたいなモノが、 わかるような気がした。 目の前の奥平チーフは、 匠の、なめらかで。 しなやかで、強靭で、 美しい体躯を撫で上げていくのに。 とても苦しそうに見えて、 見てる方が、痛くなる。 私にとっては、 子供と、同じように大切で。 どちらがどうとか、 そんな判断はできないくらい。 失えないモノなのに。 同じ人間。 同じ男。 なのに、想う相手と異なるだけで、 こんなにも歪む表情。 それを見て。 私の左側にいた白澤有雅が、 焦れたように、ベッドへ近付いた。
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