23人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
たまりかねたように。
奥平チーフは、
黒髪を揺する。
「……キスも……してくれない……」
はらり、と。
奥平チーフの横顔に張り付いていた、一筋の黒髪の束が落ちて、
彼女の瞳が、現れた。
なんとも、たとえようがない。
敗北とか、絶望とか、憎しみとか、
そういうモノではなくて。
ただ。
途方に暮れたような、
迷子みたいに頼りない瞳で、
奥平チーフは白澤有雅を見た。
「君の躰は魅力的だ。匠1人くらい、簡単だろう。せっかく任せたんだから、やりなさい」
丸め込むような優しげな声で、
白澤有雅は、
それこそ扇情的に、奥平チーフの首筋を掌でなぞった。
最初のコメントを投稿しよう!