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それなのに、匠は。
消えた身勝手な私を探していて、
手を差し伸べてくれた。
心もカラダも。
強い力で抱きとって、
少しずつほぐしてくれた。
『一緒に成長しなくて……良かった』
ふと、私が溢した言葉に、
匠が『なんで?』と、聞くから。
『……“兄”ばかり見て、他の異性が……視界にさえ入らなかったと思うから』
そう答えたら。
端正な匠のカオが、
少しユルんで、色づいた。
――離れて成長したって
どうしようもなく惹きつけられて
結局はこの有り様なんだ
『……俺も――、同じだ……』
小さく、反応してくれた匠が、
私に笑みを溢させた。
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