番外編 和(カン)

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††† お母さんのお父さん、一ノ瀬のじいちゃんは、ロマンチストだ。 むかし、ばあちゃんを外国でクドいたときの話をする。 (和菓子屋なのに) おまけにボクが、クドキかたをおぼえられないだろうからって、カミに書いてくれた。 《『キス22箇所の意味』 髪:思慕  額:祝福、友情 瞼:憧憬  耳:誘惑 鼻梁:愛玩 頬:親愛、厚意、満足感 唇:愛情  喉:欲求 首筋:執着  背中:確認 胸:所有  腕:恋慕 手首:欲望  手の甲:敬愛、尊敬 掌:懇願  指先:賞賛 腹:回帰  腰:束縛 腿:支配  脛:服従 足の甲:隷属  爪先:崇拝》 だからボクは、 お母さんにキスするとき。 《瞼、頬、手の甲、指先》にする。 《唇》は、“侵入禁止エリア”だ。 (ムズカしい字はマサムネにきいた) お母さんの《唇》は、 おやぢのもん、だそうだ。 (おとなげねーな) だからボクは。 一ノ瀬のじいちゃんからわたされた《キスの意味》をちゃんとよんで、 お母さんに、キスをする。 お母さんのかみのけは、くろくて、ながくて、つやつやしてるから。 たまに。 かみのけのさきを、たぐりよせて、 こっそり、キスをする。 じいちゃんの話はヒミツだ。
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