番外編 和(カン)

15/20
前へ
/32ページ
次へ
お母さんは、えがおで、 おぼえておいてね、っていう。 いまは、ムズカしいことでも。 ボクのかぞくは“そのうちわかる”、なんてひとことで、おわらせない。 だからボクは、ちゃんとうなずく。 いま、やろうとしてることが。 『いつか出逢う大切な人を傷つけない』かどうか、かんがえるんだね。 おぼえておくよ、お母さん。 しっかし。 幼稚園の先生たちは、お母さんに…… なに書いたんだ? ハグのこと。 さやかちゃんと、きよのちゃんのことだとは思うけど。 お母さんはおこってないし、 わらってるから……いっか。 こういう話は、マサムネだ。 パソコンのでんわで、マサムネをよびだしたら、 うれしそうに、きいてくれた。 マサムネのマネを幼稚園の先生たちにみせたことも、ほうこくする。 やっぱ、マサムネってすげーな、っていったら、 マサムネは、のんびりわらった。 『カンくん。抱き合うのも大切だけど……抱き合わないのはもっともどかしくて、それもいいんだ』 「ふぅん」 『触れそうで触れない感じとか、想いをどう伝えよう? って、相手のことに全神経を集中させる。そういう距離感、切なくて僕は好きだよ』 マサムネがいうなら、 そうなんだろうな。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加