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「駄目なの…香川さんは。もう、挨拶も出来ないくらいに遠い人になっちゃったから…二度と一緒になんて飲みに行けない関係なの」
「おまえ…香川さんと喧嘩でもしたのか?」
「…香川さんと先生の奥さんは、昔からの親友なの。その親友に先生との関係がバレて…」
「ちょっ、ちょっと待った!BMドクターとうまくいってたのに実は奥さんが生きてて…その奥さんの親友が香川さんで…バレて香川さんと気まずくなってて…
おい、その奥さんはどうなってんだ?奥さんにもバレてぐちゃぐちゃになってんのか?複雑過ぎて訳わかんねーぞっ!」
頭の中で関係図らしき物を思い浮かべているのか、深津さんは宙で指をなぞり眉間に縦じわを刻む。
更に加えて、香川さんも先生を想い続けていて…。
「…うん、本当にぐちゃぐちゃなの。私の中も感情が乱れてぐちゃぐちゃ…。ごめんね、久しぶりに会ったのにこんな話を深津さんに…」
…するべき人じゃ無いって、自分でも分かっているのに。
深津さんが放つ包容力に満ちたオーラが、私に潜む女の狡さを引っ張り出す。
「…おまえ、友達いない淋しい女だからな」
「……」
「以前は、恋人は金だとか言う救いようの無い淋しい女だったのに…そんな顔する様になって…」
何か言いたげな目をして語尾を止めた彼。
…深津さん?
「…焼き肉」
「へっ?…焼き肉?」
「奢ってやる約束してたのに、果たせずじまいだ。今週末はどうだ?俺、今はコンビニの土曜のシフト入れてないから」
深津さんは目尻を下げ、目をパチクリさせる私に柔らかな笑みを向けた。
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