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……ーヤ、
……マーヤっ……
「マーヤっ!」
突然と、ソファーに座って洗濯物を畳む私の膝の上に、咲菜ちゃんが勢いよく飛び込んで来た。
「うわっ!えっ、何!?どうしたの?」
手は動かしていたものの、心ここに在らずで考え事をしていた私は、驚いて目を丸くする。
畳みかけていたタオルを胸の下敷きにして、私の膝の上で膨れっ面する少女。
「マーヤ、いっぱいよんだのに。パパ、ただいましたのに」
咲菜ちゃんはダイブした体を起こし、ダイニングキッチンを見て指をさす。
少女の指先に誘導され視線を上げると、そこにはテーブルの前に立ちこちらを見つめる先生の姿が。
「あっ、おかえりなさい!」
帰宅したばかりの彼を見て、膝の上に乗せるバスタオルの存在も忘れ慌ててソファーから立ち上がった。
ぼーっとしていた私に彼の帰宅を知らせ終えた咲菜ちゃんは、嬉しそうに父親のもとに駆け寄り抱きついた。
「ただいま。…落ちたぞ」
「へ?…」…落ちた?
「バスタオル。畳んでる途中だったんじゃないのか?」
先生は少女の頭を撫でながら、きょとんとする私の足もとを指差してフッと小さく笑った。
「あ…うん。今日は遅かったね。待ってて。直ぐに食事を温めるから」
「食事は要らない。検討会の後に医局の奴らと食べて来るってメールしたけど…見てないのか?」
「えっ…そうなんだ。ごめん、気づかなかった…」
足もとから拾い上げたタオルを掴んだまま、きまり悪そうな顔をして声を落とした。
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