第19話 【再会】

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『俺は最初からお前の過去を、傷ついた心を利用した。全ては愛する娘のために』 彼が放った無情な言葉が、頭の中で何度も繰り返される。 『いつかは打ち明けなければいけないと思っていた。…その時は、麻弥の選択を受け入れようと決めていた』 彼の身勝手な言葉が、私の心を蝕んでいく。 『それでも愛している』と、『それでも離したくない』と、情熱を貫き通してくれたのならば、どんなに心が救われただろう。 私の選択を受け入れる…… つまり、私は彼にとって失っても構わない存在なんだ。 私は彼に愛されてなどいなかった。 彼が愛しているのは、愛する妻が残した愛する娘……本当の家族だけ。 私を抱いたのも、娘を守ると言う目的に対する手段に過ぎないんだ。 そこに存在していた筈の愛を否定される事ほど、残酷なものはない。 最初から分かっていたじゃない。 不似合いな夢など見てしまったら、いつかは痛い目に遭うって。 甘い蜜ほど毒になるって。 あの夜に戻ろう……彼に初めて抱かれた、あの夜に。 彼は私を利用した。 そして私も、彼の財力を利用した。 私は家政婦。 彼は雇主。 それ以上でも以下でもない。 彼が私を借金から解放してくれたのは事実。 彼との事情がどうであれ、咲菜ちゃんに対しての愛情は変わらないのも事実。 いっぱい泣いた。 いっぱい考えた。 そして私が出した答え…… 仕事を放棄して途中で逃げ出す事はしたくない。このまま咲菜ちゃんを見捨てる訳にはいかない。 高瀬家の家政婦として、咲菜ちゃんの教育係として、最後まで責任を果たさなければならない。 契約期間はあと9か月。 私はあの家を出て、彼の望む【家政婦】をやり遂げてみせる。 それで全て終わりにしよう…… どんなに想っても、どんなに願っても、私の描いた未来はそこに無いのだから――――。
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