第19話 【再会】

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リビングに足を踏み入れると、耳に流れ込んで来たのはテレビの音だった。 その前に先生の姿があるのかと思いきや、ソファーにあるはずの彼の背中が見えない。 えっ、テレビつけっぱなしで自室に行っちゃったの!?部屋の電気も煌々とついてるし! 「もうっ、電気代が勿体無いじゃん!」 取り敢えずダイニングスペースの照明を落とし、テレビのリモコンを求めてソファーに近づく。 テレビの前にあるテーブルに置かれているのは、ビールの空き缶三本と、ロックグラスとジンのボトルが一本。 飲んだお酒もグラスもそのままー!? …ったく、私の契約内容は咲菜ちゃんを寝かせるまでなんだから。自分の飲んだものくらい、キッチンに運んでから部屋に行ってよねっ。 大きなため息を吐き、普段より量が多めと思われる、晩酌のあとを片付けるためにテーブルに近づいた。――と、その時。 「うわっ!先生……」……居たんだ、ここに。 視界に映り込んだのは、ソファーで寝転がり寝息を立てる先生の姿。 私の気配にも声にも反応せず、下にした右腕を枕代わりにして完全に眠っている。 「先生、こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ。ねえっ」 腰を屈め、彼の肩に手を置いて体を揺さぶる。…が、眉を少しだけ歪めたものの目覚める気配は無い。 …どうしよう。 先生の掛け布団を運んで来ようかな。 息をついて、先生の顔の前にしゃがみ込む。 「……」 先生の寝顔を見るのは何日ぶりだろう… 最後に抱かれたのは、確か三週間前だったかな…。 私に触れたこの唇……この長い指…… もう、二度と触れては貰えない。二度と彼に抱かれることは無い… 「あの頃に、戻れたら良いのに…」 …本当は、真実なんか知らずにいたかった。 例え嘘で固められた世界でも、ずっとあの幸せの中で夢を見ていたかったのに… 彼を見つめる瞳に涙が滲む。 「先生…」 悲しみで凍えそうな声が喉を掠めた。 小さく震える指先で、そっと彼の頬に触れようとしたその瞬間。 彼はゆっくりと瞼を開き、涙で潤んだ私の瞳を見る。 「ごっ、ごめんなさい!起こしたんだけど、先生なかなか起きなくてっ…」 驚きのあまり声を裏返し、慌ててその手を引く。けれども、追うようにして伸びた彼の手が、私の手首を掴んだ。 「……センセ?」 「麻弥、行くな…」 彼はうわ言の様に言って、強い力で私を抱き竦めた。
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