第19話 【再会】

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彼の指が溢れ出る熱を絡ませて、私を深い快感へと導いて行く。 「…ああ……っ…先生……っ…」 彼から与えられる悦楽を待ち望んでいた身体が、彼の指を締め抱き、交わす情熱ごと奥へと引き込もうとしている。 もう…… 何も考えられない。考えたくない。 このまま先生と繋がりたい…… 一つに溶け合って、この欲情に溺れ、苦しみなど忘れ、 貴方と一緒に快感の淵まで堕ちてしまいたい―――― 「麻弥……」 名を呼ぶ彼の声が、悲痛な音となり私の耳もとに落ちた。 トク……トク……トク…… ―――遠くから、鼓動が聞こえる。 これは、私の心臓の鼓動? ……いいえ、違う。 なら、彼の鼓動? ……違う。 これは小さくて、冷たくて、体温の感じられない…… 雪菜さん!? 「……」 突然と閉じていた瞼を開いて、怯えた様に身体を震わせる。 脳裏に焼き付いていた彼女の痛々しい姿が蘇り、私を責め立てる様に脳内を駆け巡る。 彼女が見てる…… 私達を見てる…… あの部屋で、あの暗闇で一人…… 美しい顔を失い……足を失い……人間としての生きる力を失い…… 愛する家族から遠ざけられて、一人あの部屋で――― 雪菜さんが私達を見てる。 ごめんなさい…… ごめんなさい…… 目を大きく見開いて、何かに憑りつかれたように天井に視線を置く私。 「……麻弥?」 そこに無い恐怖に怯え、人形の様に身体を固める私の顔を見つめる彼。 「どうした?涙が……」 先生は頬に伝う私の涙を指でなぞり、不安げに眉を寄せる。 ……真実なんて知りたくなかった。 だけど私は、真実を知ってしまった。 知ってしまったら、それから目を背けることは出来ない。 …あなたが私に向ける思いが、私のあなたへの想いと交わらないものだとしても、 それでも私は、あなたを愛してる。 愛してるから、あの雪菜さんを裏切ることが出来ない。 あなたの心を蝕んでいる【罪】の償いに、きっと私の存在が邪魔をするから――。 「…ごめんなさい…私……部屋に戻ります」 私に触れる彼の手から逃げる様に体を起こし、目を伏せた。
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