赤い、桜

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野良猫を捕まえるのは、 鳥を捕まえるより簡単だった。 家の近辺の野良猫は餌を貰い慣れてるらしく、 食い物をちらつかせるとすぐに寄ってきた。 食ってる間に上から袋をかぶせて簡単に捕獲。 その袋を思いっきり 地面に叩き付ければ終わりなのだが、 罪悪感からか手が震えた。 目を瞑り意を決して叩き付ける。 「ふぎゃっ!」   猫は何ともいえない声を上げると、 幾度か痙攣したあと動かなくなった。 恐る恐る袋を開けると、 口から血を流して死んでいる。 猫の死体は、庭の桜の根元に埋めた。   それから俺はせっせと猫を殺し、 桜の根元に埋め続けた。 初めのうち抱いていた罪悪感は 次第に薄れていった。 ちょうど大学受験を控え、 ストレスが溜まっていたこともあって、 猫を殺すことは いいストレス発散にもなっていた。   大学生になった春。 やはり桜は赤く咲かない。 少しくらい ピンクが濃くなっても良さそうなものだが、 それもない。
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