赤い、桜

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多少焦りを感じていたが、 その頃は少し、 周囲の目が気になり始めていた。 近所の人間が野良猫の減少について、 騒ぎ始めたのだ。 殺した猫の死体は人目につかないように 庭の桜の根元に埋めているし、 バレるはずはないと思っていた。 が、俺の家の方から 猫の尋常でない声が聞こえたなどと、 まことしやかに噂が流れ始め、 母も俺に対して疑念の目で見始めたので、 仕方なく暫くおとなしくしておくことにした。   大学二年の夏。 母が会社の人間と旅行に行ったその日。 ――初めて人間を殺した。   母が泊まりで旅行に出た夕方、 面倒くさいと思いつつ晩飯の買い物に出かけ、 家出少女に声を掛けられた。 自分こと、 好きにしていいから一晩泊めて欲しい、と。 いってることも頭の軽い莫迦女だか、 見た目もそのままだった。
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