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無理な体制で首が痛くなったっていい。一分一秒早く帰りたい。移動する時間も笑う時間も嫌だ。
「あ、そう?」
低い声が鳴った。
ズボンのベルトをカチャカチャと鳴らす。
私はゆっくりとマスクをとってポケットにしまった。ああ見たくない。眉間にシワが寄りそうになる。
そして男を、私は口でまるっと飲み込む。
ああ、きみ上手いね。なんて声の間に私を褒めた。
何も考えるな。
何も思うな。
手と口を動かしているうちに、口にドロリとした液体が勢いよく流れ込んだ。
満足した男が、慌てて私にティッシュの箱を差し出してくれたので、数枚取り出し口から吐いた。
男はズボンと下着を上げて、ちょっと待ってねと言いベルトを閉めた。
ズボンのポケットから財布が取り出されて、視線は自然とそこにいく。
免許証がチラリと見えた。一瞬で忘れる名前だった。
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