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俺が座っていたのは、先程書いた様に波がつま先に当たる程度の位置。
そこから一歩たりとも動いた覚えはない。
ただ、覚えているのは台風の影響あってか、荒れてた海が、たった一度起こした気まぐれの様な大波に俺は体を覆われ、気付いた時には足の届かない位置にまで引きずり込まれていたと言う事だ。
瞬時に俺はパニックに陥る。
学校のプールですらまともに泳げない子供が、この荒れた海で足もつかぬとあれば、溺れるのは当然。
確か俺は溺れながらも必死に『助けて‼』と叫んだ気がする。
それが声になっていたかどうかは解らない。ただ必死にもがいていたら、いつの間にか近くにいた誰かの手が、俺の体に触れた事だけが解った。
ハッと見るとそれは親父の姿だった。
実は俺は親父とあまり仲良くなかったのだが、この時ばかりは親父の体にしがみつこうとした。
だが、親父はいきなり俺の首を掴み、グッと上に持ち上げるのだ。
これは親父が俺の顔を海面より上に持ち上げ、息を吸わそうとした行為だった。
しかし俺はパニック状態だった。
元々仲良くない親子。俺はこれを期に、『親父がとどめをさしに来た‼』と、とんでもない勘違いをし暴れに暴れまわった。
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