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暗い夜。ビルの外階段を上がる人影。
冬支度の女子高生、栗栖茉奈が階段を上がっている。フワフワの、可愛らしいリュックを背負う彼女は、荒んだビルの外観とはミスマッチである。
ビルの二階のドアを開ける。
ゲームセンター『ロックオフ』。その店内に足を踏み入れる茉奈。
見た目、普通のゲームセンターだが、ほとんど無人。喧騒とは無縁の寂れた店。
カウンターに店員が一人だけ。ワイシャツに蝶ネクタイの制服姿。
カウンターの横に扉。"関係者以外・立入禁止"のプレートが、ドアに貼られている。
まっすぐに、ドアの前まで行く茉奈。
「お客様、その先は関係者以外の入室は、お断りさせていただいてます」
店員の言葉に遮られ、足を止める茉奈。
「どうすれば、関係者になれる」
「会員様の推薦状をお持ちですか？」
「そんなものない」
ぶっきらぼうに答える茉奈。
「失礼ですが、ここへはどのような経緯で来られましたか？」
「"栗栖 礼"を知っているか？」
「……」
茉奈の言葉に、表情を曇らせる店員。
「二年前、兄はここに来ていたはずだ」
「……少々、お待ちください」
内線電話の受話器を耳に当てる店員。
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