始まり

7/8
前へ
/8ページ
次へ
駅から学校までは徒歩20分程で、軽く走ってきたので15分程度で到着した。学校の校門に柵は着いて居ないので、玄関までは簡単に進める。 校門から距離のある玄関に行き、鍵を確かめる。現在の時刻は7時13分。とっくに先生も、警備員のおじさんも帰ってる時間だ。当たり前だが、玄関の鍵は閉まっている。職員玄関の方も確かめてみたが、こちらも同じ結果だった。 だが、ここで諦めるような俺ではない。俺はこの学校の警備員のおじさんがボケ気味なのを知っている。トイレや2階の教室の窓などは鍵が掛かって居ないことが多い。教室なんかは、外からチラリと見て終わりだから、カーテンで隠れている所などはミソである。 俺がここまで詳しいのも、良く忘れ物をしては学校へ取りに行く為だったりするのだが、流石に今のいままで月曜に取りに行ったことは無かった。 というのも、忘れた物も大したものは無かったということと、怪談の事があったから。俺が信じていなくても、怪談を信じてる親が居る手前、家を抜け出すのは至難の技だったからだ。 月曜の怪談に、みんな怯え過ぎだ。こんなに科学の発展した世の中で幽霊や怪談やらなんて、科学者が聞いて呆れる。今時の超常現象は全て科学の力で解決出来る!というのが俺の考えた。 怪談なんて言っても、内容はありきたりで何処にでもありそうなはなしばかりだ。"動く人体模型"や"ピアノを弾くモーツァルト"に"保健室に現れる幽霊"などなど、他の学校にもありそうな胡散臭いものばかり。なんでそんなものを本気で信じているのか、なんで月曜だけなのか、それが俺には不思議で仕方なかった。 だから今日、実際に学校に忍び込むついでだ。この胡散臭い怪談が嘘であることを証明したら、これからは月曜も残ってバレーができる。その分先輩と一緒に居る時間も増えるというわけで、証明したことにより俺の株は上がり、先輩と一緒に居る時間も長くなり一石二鳥というわけである。 俺の普段の忍び込みルートの1つ、男子トイレの窓を確認する。スマホの懐中電灯を使い、窓の鍵を確認する。しまっていても、閉め方が甘ければ上手く開けられるのである。 見ると鍵は空いていた。しかし、少しばかり窓が右にずれていた。ほんの少しだけ空いた隙間。普通なら閉め忘れと思うだろうその隙間は、普段なら絶対にあり得ない事。誰かが先に侵入したとしか思えないものであった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加