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「姫良、またここかよ」
声を認識した姫良は顔を上げ、一瞬後にはそのくちびるに笑みを広げた。
「哲(テッ)ちゃん、どうしたの?」
「たぶん、おまえがここにいるだろうって予感」
「鋭いね」
「あんま、独りに慣れんじゃねぇぞ」
「哲ちゃん、よくそう云うけど、自分だってそうじゃない?」
「おれは男だからいいんだ」
「わたしはちゃんと昼間に暖まったから、いまは独りでも平気。哲ちゃんが来ると思ってたし」
姫良は哲を見上げてうれしそうに笑った。
「あの男んとこか?」
「うん」
「どうするつもりだ?」
「どうもしない。カノジョいるし」
姫良はあっさりと報告した。哲はその声の裏に姫良の感情を悟る。
似た者同士のおれにしかわからない。
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