クリスマスの涙

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オフィス街のなか、ビルの谷間を通る風はだんだんと頬の温度を奪っていく。 遠野姫良は淡いグリーンのマフラーを引きあげて顔をうずめた。 しばらく陽気が続いていたのに今日はめずらしく雪が散らついている。 今日は二十四日。 恋人たちにとって特別の日だということを考えると、タイミングとしてはこれ以上にないシチュエーションだ。 あいにくと、姫良は暑さよりも寒さのほうが苦手なのだが。 いくつものビルが建ち並んでいるなかでひと際高くそびえる貴刀(タカトウ)ビルに入ると、寒さから開放されてふっと肩のこわばりが解ける。 ほっとひと息ついて、姫良は受付嬢が待つコーナーへと向かった。
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